【心電図検定公式問題集の解説】問題8:急性下壁梗塞。

問題解説

心電図検定公式問題集の解説

※ 心電図検定公式問題集(2級/3級、改訂3版)の問題を解説しています。

問題8:急性下壁梗塞の心電図所見

背景:60歳、男性。胸部から心窩部にかけての圧迫感
リズム:整。
心拍数:約 55 /分。
:正軸(Ⅰ、aVF誘導ともにQRS波の和が陽性)。
P波:正常(高さ、幅)。洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。
PR間隔:正常、0.12 秒程度(2.5~3 mm程度)。
QRS波:幅 0.10 秒程度(2.0~2.5 mm程度)。RV1 = 0.2 mV程度。RV5 = 2.4 mV程度。移行帯はV3誘導。
ST部分Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導でST上昇を認める。Ⅰ、aVL、V1~V3誘導でST低下を認める。
T波:正常。

これらの心電図所見より、選択肢の中では「急性下壁梗塞」が最も疑われる。

判読のポイント

Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導でST上昇、Ⅰ、aVL誘導で対側性のST低下を認める。
② Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導でのST上昇は左室下壁の貫壁性心筋虚血を示す。
③ 記録時点では心筋壊死に至っていないため異常Q波はみられていない
房室結節に虚血を生じるとⅠ度房室ブロックを呈することがある(本症例ではみられない)。

下壁梗塞

① 下壁梗塞は「ほぼ右冠動脈の閉塞」によって生じる(左回旋枝のこともある)。
② 下壁梗塞は「側壁梗塞」、「後壁梗塞」を合併しうる。
③ 房室ブロックを合併すると徐脈となる。
右室梗塞(右冠動脈近位部閉塞)を合併すると重症となりうる。

下壁梗塞に随伴することのある所見

① 下壁梗塞+V1誘導単独のST上昇
→ 右室梗塞の合併を疑う。
※ 下壁梗塞では全例で右側胸部誘導を記録するとよい。

※ 本症例ではV1誘導のST上昇は認めない。
※ そのため右室梗塞の合併は考えにくい。

② 下壁梗塞+V1誘導のST部分が正常+V2~V4でST低下
 → 後壁梗塞の合併を疑う。

※ 本症例ではV2~V3で軽度のST低下を認める。
※ 後壁梗塞を合併している可能性は否定できない。

異常Q波とは?

① 異常Q波は「左室壁の心筋壊死」が起こった場合に出現する。
② 異常Q波は「梗塞領域から最も近い場所の誘導」で出現する。
③ Ⅲ、aVLだけの異常Q波は病的意義が低い。
④ 異常Q波は、対応する部位のグループにわけて考えるとわかりやすい。
→ 前壁(V1~V3)、下壁(Ⅱ・Ⅲ・aVF)、側壁(Ⅰ・aVL・V4~V6)など。
⑤ 異常Q波かどうか微妙な心電図では、陰性T波とあわせて考える
→ 心筋梗塞の所見はT波まで及ぶことが多いため。

異常Q波のみかた

① V1~V4に異常Q波 = (陳旧性)前壁中隔梗塞。
 → V1に異常Q波がある場合には「中隔」という言葉を付ける。
② V2~V4の異常Q波は「前壁梗塞」とする。
※ V1、V2の異常Q波は健常者でもありうる。

ひとこと

下壁梗塞に合併しやすい症候、所見は必ず抑えておきましょう。

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