心電図検定公式問題集の解説
※ 心電図検定公式問題集(2級/3級、改訂3版)の問題を解説しています。
問題25:不完全右脚ブロックの心電図所見
背景:40歳、男性。健康診断で心電図異常を指摘された。
リズム:整。
心拍数:約 87 /分。
軸:正軸(Ⅰ、aVF誘導ともにQRS波の振幅の和が陽性)。
移行帯:正常(V3誘導)。
P波:正常(高さ、幅)。洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。
PR間隔:正常。0.16秒程度(2.5~3 mm程度)。
QRS波:幅0.10秒程度(2.0~2.5 mm程度)。V1誘導でrSR’型。Ⅰ、V6誘導でS波を認める。RV5=1.9mV程度。
ST部分:正常(J点の上昇なし)。
T波:正常。
これらの心電図所見より、選択肢の中では「不完全右脚ブロック」が正しい。
判読のポイント
① V1誘導のrSR’型、Ⅰ・V6誘導のS波。
② QRS波の幅が正常。
→ 「不完全右脚ブロック」と判断できる。
右脚ブロックとは?
① 右脚の伝導障害を反映した心電図変化。
→ 右脚自体は長く障害を受けやすい。
② 一般集団の約2~3%の頻度であり、50人に1人程度に認められる。
③ 基本的には心疾患との関連はない「良性所見」である。
④ 完全右脚ブロックは「加齢」にともなって増加する。
⑤ 若年症例のなかに「心房中隔欠損症」が隠れている場合がある。
不完全右脚ブロックとは?
① V1誘導のrSR’型、Ⅰ・V6誘導のS波を認める。
② QRS波の幅が0.12秒を超えない。
→ これらを認めた場合、「不完全右脚ブロック」と判断する。
心室内伝導障害を認める主な病態
① 脚ブロック
完全右脚ブロック
完全左脚ブロック
不完全右脚ブロック
② 分枝ブロック(ヘミブロック)
左脚前枝ブロック
左脚後枝ブロック
③ 非特異的心室内伝導障害
①、②いずれとも診断できないもの。
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改訂3版 心電図検定公式問題集(2級/3級)
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実力心電図 ―「読める」のその先へ
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レジデントのための これだけ心電図
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楽しく学んで好きになる!心電図トレーニングクイズ
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続・楽しく学んで好きになる! 心電図トレーニングクイズ2
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心電図のみかた、考えかた 応用編
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