心電図検定公式問題集の解説
※ 心電図検定公式問題集(2級/3級、改訂3版)の問題を解説しています。
問題53:心房粗動の心電図所見
背景:65歳、男性。労作時の動悸症状を主訴に外来を受診した。
リズム:整。
心拍数:約 150/分。
軸:左軸偏位(Ⅰ誘導でQRS波の振幅の和が陽性、aVFで陰性)。
移行帯:正常(V3~V4誘導)。
P波:Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導で下向きの鋸歯状波(F波)を認める。
QRS波:幅0.10秒程度(2.0~2.5 mm程度)。
ST-T部分:鋸歯状波のため評価困難。
これらの心電図所見より、選択肢の中では「心房粗動」が正しい。
本症例では2:1伝導となっている。
判読のポイント
下壁誘導で下向きの鋸歯状波を認める。
→ 心房粗動(通常型)と判断できる。
心房粗動とは?
① 心房粗動は「心房内(主に右房)を大きく旋回するマクロリエントリー回路」によって発生する。
② 洞性P波はなく「鋸歯状波」と呼ばれる「F波」が出現する。
③ F波の形態に基づいて、通常型と非通常型に分けられる。
心房粗動の心電図
① 通常型心房粗動
→ Ⅱ、Ⅲ、aVFで下向きのF波(上行脚が急、下降脚がなだらか)。三尖弁輪を反時計方向回転する(右室心尖部から見た場合)。
② 非通常型心房粗動
→ Ⅱ、Ⅲ、aVFで上向きのF波(上行脚がなだらか、下降脚が急)。
※ 非通常型心房粗動のF波は典型的な波形を呈さない場合がある。
「心房粗動」と「心房頻拍」の見分け方
① 等電位線がないのが「心房粗動」
② 等電位線があるのが「心房頻拍」
※等電位線=連続するP波の立ち上がり部分を結んだ線。
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改訂3版 心電図検定公式問題集(2級/3級)
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