心電図検定公式問題集の解説
※ 心電図検定公式問題集(2級/3級、改訂3版)の問題を解説しています。
問題79:WPW症候群(B型)の心電図所見
背景:14歳、男性。最近、運動で動悸が出現するようになり来院した。
リズム:整。
心拍数:約 75/分。
軸:左軸偏位(Ⅰ誘導でQRS波の振幅の和が陽性、aVF誘導で陰性)。
移行帯:正常(V2~V3誘導)。
P波:正常(高さ、幅)。洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。
PR間隔:短縮、約0.08秒(2mm程度)。
QRS波:幅0.12秒程度(3mm程度)、やや延長。Ⅰ、aVL、誘導でQRS波の立ち上がりにデルタ波を認める。
ST-T部分:Ⅰ、aVL誘導で二次性ST-T変化を認める。
これらの心電図所見より、選択肢の中では「WPW症候群(B型)」が最も疑われる。
判読のポイント
① 頻拍発作+PR間隔の短縮+デルタ波を伴うQRS波+QRS幅の増大
→ WPW症候群と判断できる。
② V1誘導でR波<S波
→ WPW症候群(B型)と判断できる。
WPW症候群とは?
① 先天的に心房と心室の間に副伝導路が存在する状態。
② 有病率は1000人に1人と多く、日本では約12万人程度と推定される。
③ WPW症候群の約4人に1人で頻拍発作を生じる。
④ WPW症候群にはA型、B型、C型のパターンがある。
⑤ 基本的にはV1誘導の波形で見分ける。
⑥ A型:Kent束が左房~左室間に存在。
→「右脚ブロック型」となる
⑦ B型:Kent束が右房-右室間に存在。
→「左脚ブロック型」
⑧ C型:副伝導路が中隔に存在。
→ V1で陰性デルタ波。
→ ほかⅠⅡⅢaVF等とあわせて判断。
⑨ WPW症候群の4つの特徴。
・PR間隔の短縮。
・QRS幅の増大。
・QRS初期成分にslur状のデルタ波。
・ST-T異常。
※ 本症例ではV1誘導でrS型であり、WPW症候群(B型)と判断できる。
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