心電図検定公式問題集の解説
※ 心電図検定公式問題集(2級/3級、改訂3版)の問題を解説しています。
問題88:発作性心房細動(誤っている選択肢)のモニター心電図所見
背景:71歳、女性。入院中に胸痛を訴えた。
リズム:胸痛発作前:整。胸痛発作時:不整。胸痛発作後:やや不整。
心拍数:胸痛発作前:約 55/分。
P波:胸痛発作前:正常(高さ、幅)。胸痛発作時:P波とQRS波が1:1対応していない(房室ブロック)。胸痛発作後:正常(高さ、幅)。
PR間隔:胸痛発作前:正常。0.12秒程度(2.5~3 mm程度)。
QRS波:胸痛発作前:幅0.08秒程度。胸痛発作時:幅0.12秒程度、延長。胸痛発作後:幅0.08秒程度。
ST-T部分:胸痛発作前:正常。胸痛発作時:ST上昇を認める。胸痛発作後:正常。
これらの心電図所見より、選択肢の中では「発作性心房細動」が誤っている選択肢である。
①冠攣縮性狭心症、④徐脈性不整脈、⑤一過性ST上昇発作は正しい選択肢である。
判読のポイント
胸痛発作時に一過性のST上昇と房室ブロックを認め、発作後は速やかにST部分が正常化している。
→ 冠攣縮性狭心症が疑われる。
急性下壁梗塞について
① ほとんどが「右冠動脈」の閉塞により生じる(左回旋枝の場合もある)。
② 下壁梗塞は「側壁梗塞」や「後壁梗塞」を合併することがある。
③「房室ブロック」を合併すると徐脈となる。
④ 右室梗塞(右冠動脈近位部閉塞)を合併すると重症となる。
※本症例では、胸痛発作時に「房室ブロック」を合併しており、右冠動脈or左回旋枝の攣縮が疑われる。
2:1房室ブロックとは
① P波のひとつおきにQRS波が脱落する。
② Wenckebach型の進展により発現することが多い。
③ Wenckebach型とMobitzⅡ型の区別はできない。
→ なので、2:1房室ブロックと呼ぶ。
④ 経過中にWenckebach型やMobitzⅡ型の形をとることがある。
→ その場合は区別できる。
※本症例では「高度房室ブロック」が正答となっているが3:1以上に伝導比が低下した状態が記録紙内ではみられておらず、高度房室ブロックと断定はできない(ただし、発作性心房細動が明らかに誤っている選択肢ではある)。
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