【ER心電図 基本編を解く】問題22:右室肥大、完全右脚ブロック、前壁中隔梗塞。

問題解説

ER心電図 Ⅰ:基本編の解説


判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える

※ ER心電図 基本編(初版第4刷2019年4月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。

問題22:右室肥大、完全右脚ブロック、前壁中隔梗塞の心電図所見

背景:75歳、男性。咳、呼吸困難および喘鳴
リズム:整。
心拍数約 110/分
不定軸(S1S2S3パターン、北西軸)
移行帯反時計方向回転(V1誘導、右脚ブロック)。
P波:正常(高さ、幅)。洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。
QRS波幅0.16秒程度(約4mm)、延長。V1~V2誘導で高いR波を認める(V1誘導のR波 1.6mV、V2誘導のR波 1.8mV程度)。V1誘導でRR’型、Ⅰ・V6誘導で深いS波を認める(右脚ブロック)。V1~V4誘導でq波・Q波を認める(異常Q波)
ST-T部分V1~V3誘導で脚ブロックに伴う二次性ST-T変化を認める

これらの心電図所見より、「右室肥大、完全右脚ブロック、前壁中隔梗塞」と考えられる。

右室肥大の心電図(基本)

① 右軸偏位。
V1、V2誘導で高いR波+ストレイン型ST-T変化
V5、V6誘導でR波<S波
※全てを満たす典型的な右室肥大の心電図所見を呈することは稀。
※他の右心負荷所見(右房拡大:Ⅱ誘導の高いP波)等と併せて総合的に判断する。

※ 本症例では、②③を認める。

右室肥大をきたす疾患

① 圧負荷:肺高血圧症、肺動脈狭窄(ファロー四徴症)、肺血栓塞栓症、Eisenmenger症候群。
② 容量負荷:三尖弁閉鎖不全症、肺動脈弁閉鎖不全症、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など。
③ 他:不整脈原性右室心筋症(ARVC)、右室梗塞、重症肺疾患(COPDなど)

※ 解説より、本症例は「COPD」であった。

反時計方向回転をきたす主な例と随伴所見

① 健常人。
→ 反時計方向回転のみ。
② 右室肥大。
→ 右軸偏位、右房拡大、V1-V2で陰性T波
③ 完全右脚ブロック。
→ QRS幅の延長、V1-V2でrSR´型。
④ 後壁梗塞。
→ V1-V2でR波増高、ST低下、T波増高など(鏡面像)。

S1S2S3パターンとは?

①「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ誘導の全てで深いS波」のある心電図(明確な基準はない)。
右室肥大、肺気腫、肺塞栓などでみられるが健常人でもみられる。
※「左脚前枝ブロック」と間違えないように注意。

心筋梗塞の部位診断

広範囲前壁梗塞:Ⅰ、aVL、V1~V6
前壁中隔梗塞:V1~V4
③ 前壁梗塞:V2~V4。
④ 下壁梗塞:Ⅱ、Ⅲ、aVF。
⑤ 側壁梗塞:(Ⅰ、aVL)、V5~V6。
⑥ 高位側壁梗塞:Ⅰ、aVL。

※本症例では、V1~V4誘導に異常Q波が認められる。

異常Q波とは?

① 異常Q波は「左室壁の心筋壊死」が起こった場合に出現する。
② 異常Q波は「梗塞領域から最も近い場所の誘導」で出現する。
③ Ⅲ、aVLだけの異常Q波は病的意義が低い。
④ 異常Q波は、対応する部位のグループにわけて考えるとわかりやすい。
→ 前壁(V1~V3)、下壁(Ⅱ・Ⅲ・aVF)、側壁(Ⅰ・aVL・V4~V6)など。
⑤ 異常Q波かどうか微妙な心電図では、陰性T波とあわせて考える
→ 心筋梗塞の所見はT波まで及ぶことが多いため。
⑥ 原因:心筋梗塞心筋炎、心筋症などの虚血性心疾患・心筋疾患。ただし心筋梗塞以外でも認められる。
肥満漏斗胸などの心臓の位置異常によってもみられることがある。
→ ST-T変化を伴っていない場合は疑わしい。
→ ただし、詳細な情報がない場合は断言は避けたほうがよい。
⑧ 肥満などの「位置異常」による場合は「Ⅲ誘導単独またはⅢ+aVF誘導」に多く、Ⅱ誘導には認めないことが特徴となる。

異常Q波のみかた

① V1~V4に異常Q波 = (陳旧性)前壁中隔梗塞。
 → V1に異常Q波がある場合には「中隔」という言葉を付ける。
② V2~V4の異常Q波は「前壁梗塞」とする。
※ V1、V2の異常Q波は健常者でもありうる。

※本症例では、V1~V4誘導に異常Q波を認める。

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