【ER心電図 基本編を解く】問題45:R波増高不良、陰性T波、QT延長症候群。

問題解説

ER心電図 Ⅰ:基本編の解説


判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える

※ ER心電図 基本編(初版第4刷2019年4月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。

問題45:R波増高不良、陰性T波、QT延長症候群の心電図所見

背景:46歳、男性。胸痛、左上腕痛、嘔吐および発汗
リズム:整。
心拍数:約 95/分。
:正軸(Ⅰ、aVF誘導ともにQRS波の振幅の和が陽性)。
移行帯:正常(V3~V4誘導)。
P波:正常(高さ、幅)。洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。
PR間隔:正常。
QRS波:幅0.10秒程度(約2.5mm)。V1~V2誘導でQ波を認める。V3誘導のR波は0.1mV程度(R波増高不良)
ST-T部分Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVF、V2~V6誘導で陰性T波を認める
QT時間:明らかに延長している。

これらの心電図所見より、「R波増高不良、陰性T波、QT延長症候群」と考えられる。

R波増高不良(Poor R Wave Progression: PRWP)

① V1誘導からV3(V4)誘導にかけてR波が増高していない所見。
→ 明確な定義はないが V3誘導でR波<3mmが目安
② 原因:陳旧性前壁中隔梗塞、左脚ブロック、左室肥大、WPW症候群、肺気腫、右胸心など。
※ 健常人(時計方向回転など)でもみられる。

正常なT波の向き(基本)

Ⅰ、Ⅱ、aVF、V4~V6誘導陽性T波 → 正常。
aVR誘導陰性T波 → 正常。
③ 他:特になし。
※V1~V3誘導では「陰性T波でも正常」の場合がある。
※Ⅲ、aVL誘導の「単独の陰性T波」は異常としない。

※ 本症例では、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVF、V2~V6誘導で陰性T波を認めており、症状とあわせて「前側壁・下壁の虚血」が示唆される

QT延長とは?

QT間隔が延長した状態(QTc>0.44秒)
多形性心室頻拍(TdP)、心室細動などが誘発され突然死の危険がある。
③ 学校心臓検診では0.006%、乳幼児では0.1%に発見される。
④ 薬剤服用、運動制限などが遵守できれば比較的予後はよいが、突然死を完全に予防することはできない。

QT延長症候群とは?

QT時間の延長+Torsades de pointesを認める。
器質的心疾患のない患者に失神や突然死を引き起こす
先天性と後天性に分けられる
④ 後天性QT延長症候群は薬剤、徐脈、電解質異常、低マグネシウム血症、低カルシウム血症などの二次的要因が原因となる。
⑤ 後天性QT延長症候群は複数の要因が重なっていることが多い。

先天性QT延長症候群の分類

① LQT1:大きく幅広いT波
② LQT2:平低化T波、notchを伴うT波
③ LQT3:T波の始まりが遅い
※1~3型が多数を占める。
※1~2型はカリウムチャネルの機能低下により再分極の遅延を生じる。

後天性QT延長症候群の原因

① 電解質異常:低カリウム、低カルシウム血症、低マグネシウム血症。
② 薬剤性:抗不整脈薬、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、抗アレルギー薬、抗菌薬(ニューキノロン、マクロライド、ST合剤)。

心筋梗塞の部位診断

① 広範囲前壁梗塞:Ⅰ、aVL、V1~V6。
前壁中隔梗塞:V1~V4
前壁梗塞:V2~V4
④ 下壁梗塞:Ⅱ、Ⅲ、aVF。
⑤ 側壁梗塞:(Ⅰ、aVL)、V5~V6。
⑥ 高位側壁梗塞:Ⅰ、aVL。

※本症例では、異常Q波が出現している誘導から「前壁中隔梗塞」が疑われる。

異常Q波とは?

① 原因:心筋梗塞や心筋炎、心筋症などの虚血性心疾患・心筋疾患。ただし、心筋梗塞以外でも認められる。
肥満や漏斗胸などの心臓の位置異常によってもみられることがある。
→ ST-T変化を伴っていない場合、疑わしい。
→ 詳細な情報がない場合は断言は避けたほうがよい。
③ 肥満などの「位置異常」による場合はⅢ誘導単独またはⅢ+aVF誘導に多く、Ⅱ誘導には認めないことが特徴となる。

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