【ER心電図 基本編を解く】問題73:左房拡大、低電位差、R波増高不良。

問題解説

ER心電図 Ⅰ:基本編の解説


判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える

※ ER心電図 基本編(初版第4刷2019年4月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。

問題73:左房拡大、低電位差、R波増高不良の心電図所見

背景:59歳、女性。呼吸困難、咳および顔色不良。
リズム:整。
心拍数:約 73/分。
:正軸(Ⅰ、aVF誘導ともにQRS波の振幅の和が陽性)。
移行帯:正常。
P波:洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。Ⅱ誘導で幅広いP波、V1誘導でP波の後半部分の陰転化を認める(左房拡大)。
QRS波:幅0.10秒程度(約2.5mm)。V1~V2誘導で異常Q波を認める。V3誘導のR波は0.2mV程度(R波増高不良)。四肢誘導すべてで0.5mV未満、胸部誘導すべてで1mV未満である(低電位差)。
ST-T部分Ⅰ、aVL、V5~V6誘導でST低下を認める。

これらの心電図所見より、「左房拡大、低電位差、R波増高不良」と考えられる。
解説より、本症例は「重度の肺気腫」であった。ST変化より「側壁の虚血」が示唆される。

P波の基本

① P波とは「心房の興奮」を反映したもの。
② P波の「初め1/3は右房」、「後半1/3は左房」を表す。
③ 右房は心臓の最も右側にある。
④ 左房は心臓の最も後方にある。
→「洞調律」の場合、心房の興奮方向は「常に左下方向」となる。
→ 「洞調律」の場合、P波は「常にⅠ、Ⅱ、aVFで陽性」となる。
⑤ P波は「右房と左房の興奮が合成」されている。
⑥ 右房拡大(右房負荷)では「高さ」は大きくなるが幅は広がらない。
→ P波の高さ ≧0.25mV(Ⅱ誘導)=右房負荷。
⑦ 左房拡大(左房負荷)では「」が広がる。
→ P波の幅 ≧0.10秒(Ⅱ誘導)=左房負荷。

※心電図の小さな1コマ(1mm)=0.1mV、0.04秒。

左房負荷(左房拡大)

①「P波の後半成分」は「左房の収縮」を反映している。
② 左房が容量負荷 or 圧負荷を受けると「P波の幅」が広くなる。
③ P波の幅が成人では0.12秒以上、小児では0.1秒以上の場合。
→ 左房負荷(左房拡大)を疑う。
左房負荷は「僧帽弁疾患」に合併することが多い
⑤ 原因:僧帽弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全症、拘束型心筋症など。

低電位差とは?

① 肢誘導のすべてでQRSの振幅が 0.5 mV未満。
② 胸部誘導のすべてでQRSの振幅が 1 mV未満。
→ これらを満たす場合、「低電位差」という。

低電位差の原因

低電位差は「心臓の起電力が低下した場合」や「起電力が体表に反映されない場合」に生じる。
心臓の起電力低下
→ 広範囲の心筋梗塞、心筋炎、心アミロイドーシス。
心臓の起電力が体表に反映されない場合
→ 全身性浮腫、粘液水腫、心膜液貯留、胸水貯留、高度肺気腫、高度肥満など。

R波増高不良(Poor R Wave Progression: PRWP)

① V1誘導からV3(V4)誘導にかけてR波が増高していない所見。
→ 明確な定義はないが V3誘導でR波<3mmが目安
② 原因:陳旧性前壁中隔梗塞、左脚ブロック、左室肥大、WPW症候群、肺気腫、右胸心など。
※ 健常人(時計方向回転など)でもみられる。

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