ER心電図 Ⅰ:基本編の解説
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
※ ER心電図 基本編(初版第4刷2019年4月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。
問題80:促進房室接合部調律の心電図所見
背景:65歳、女性。胸部の奇妙な感覚。
リズム:整。
心拍数:約 70/分。
軸:左軸偏位(Ⅰ誘導でQRS波の振幅の和が±0程度、aVF誘導で陰性)。
移行帯:正常(V4誘導)。
P波:明らかな洞性P波は確認できない。QRS波の直後に異所性P波を認める(Ⅱ、V1誘導でわかりやすい)。
QRS波:幅0.08秒程度(約2mm)。
ST-T部分:正常。
これらの心電図所見より、「促進房室接合部調律」と考えられる。
異所性心房調律とは?
①「洞結節以外の調律」をまとめて“異所性”と呼ぶ。
② 異所性心房調律=冠静洞調律、左心房調律、房室接合部調律など。
③ 異所性心房調律の例:心房期外収縮、心房頻拍、多源性心房頻拍、非発作性接合部頻拍、移動性ペースメーカなど。
促進房室接合部調律(Accelerated (AV) Junctional Rhythm: AJR)
①「房室接合部の自動能が亢進」して、洞結節の興奮頻度を追い越した状態。
② 房室接合部の自動能は通常 40~60 /分程度だが、「60~100 /分程度」まで亢進。
→ QRS波がP波を追い越して「先行する洞性P波がみられなくなる」。
③ 逆行性P波は「Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導」での「PR間隔の短い陰性P波」として確認できる場合がある。
④ 原因:虚血性心疾患、心筋炎、β刺激薬、ジギタリス中毒、心術後など。
※本症例では、心拍数より「促進房室接合部調律」が疑われる。
使用している教材
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
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オススメ度:★★★
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
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改訂3版 心電図検定公式問題集(2級/3級)
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実力心電図 ―「読める」のその先へ
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続・楽しく学んで好きになる! 心電図トレーニングクイズ2
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