ER心電図 Ⅰ:基本編の解説
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
※ ER心電図 基本編(初版第4刷2019年4月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。
問題138:促進心室固有調律の心電図所見
背景:86歳、男性。急性心筋梗塞に対してストレプトキナーゼ静注、その2時間後、現在は無症状。血圧 125/70。問題137と同一症例。
リズム:整。
心拍数:約 105/分。
軸:不定軸(S1S2S3パターン、北西軸。Ⅰ、aVF誘導ともにQRS波の振幅の和が陰性)。
移行帯:反時計方向回転(右脚ブロック型)。
P波:明らかな洞性P波は確認できない。
QRS波:幅0.16秒程度、延長。Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導で異常Q波を認める。
ST-T部分:V1誘導で脚ブロックに伴う二次性ST-T変化を認める。
これらの心電図所見より、「促進心室固有調律」と考えられる。
判読のポイント
急性心筋梗塞後+RR間隔が整の幅広いQRS波の頻拍+心拍数が40~110拍/分程度
→ 促進心室固有調律と判断できる。
促進(型)心室固有調律(Accelerated IdioVentricular Rhythm: AIVR)とは?
① 心室の自動能が心房の調律を超えた状態。
② 心室の自動能亢進+心室頻拍(VT)よりレートが遅くなる。
→ スローVTとも呼ばれる。
③ 通常の心室調律は 20-40 拍/分程度だが、AIVRでは 40-110 拍/分程度となる。
④ 原因:急性心筋梗塞(再灌流後)、急性心筋炎、重症弁膜症、ジギタリス中毒、低カリウム血症など。
※ 本症例では「心筋梗塞急性期」という病歴も重要。
使用している教材
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
オススメ度:★★★
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
① 「200症例の実際の心電図」を通して心電図判読のトレーニングができます。
② 簡潔な解説には注意が必要ですが、ある程度の知識と自信がついてきて、症例数をこなしたい人にはオススメです。
③ おすすめの人:中級者以上(1級~2級)。
心電図検定対策におすすめの本
改訂3版 心電図検定公式問題集(2級/3級)
改訂3版 心電図検定公式問題集(2級/3級)
オススメ度:★★★
改訂3版 心電図検定公式問題集&ガイド: 受検者必携! 2級/3級
① 日本不整脈心電学会が出版している公式問題集です。
② 2~3級の受験者を対象とした本ですが、1級相当の問題が19問あります。
③ 最初にこの本で現時点の実力を測ると良いと思います。
④ おすすめの人:すべての受験者(1級~4級)。
実力心電図 ―「読める」のその先へ
実力心電図 ―「読める」のその先へ
オススメ度:★★★
実力心電図―「読める」のその先へ
① 日本不整脈心電学会が出版している書籍です。
② 心電図の基礎知識と代表的な疾患の心電図を網羅しています。
③ 大型本で見やすく解説や鑑別のポイントが充実しています。
④ おすすめの人:すべての受験者(1級~4級)。
レジデントのための これだけ心電図
レジデントのための これだけ心電図
オススメ度:★★
レジデントのための これだけ心電図
① 研修医向けの本ですが、心電図を全くの基礎から学びたい人におすすめです。
② 本書のような易しい本でザッと全体像を理解しておくと勉強が楽になります。
③ 一方で、ある程度心電図の知識がある人には物足りないかもしれません。
④ おすすめの人:初学者(3級~4級)。
楽しく学んで好きになる!心電図トレーニングクイズ
楽しく学んで好きになる!心電図トレーニングクイズ
オススメ度:★★★
楽しく学んで好きになる! 心電図トレーニングクイズ
① 30例の心電図を通して心電図判読の基本から応用まで解説されています。
② 心電図から「鑑別疾患を考えるトレーニング」ができます。
→ 心電図検定で試される力です。
③ 解説が非常に丁寧であり、初学者でもつまづくことなく理解できます。
④ おすすめの人:初学者~中級者(2級~4級)。
続・楽しく学んで好きになる! 心電図トレーニングクイズ2
続・楽しく学んで好きになる! 心電図トレーニングクイズ2
オススメ度:★★★
続・楽しく学んで好きになる! 心電図トレーニングクイズ2
①「心電図トレーニングクイズ」の続編です。
② 前作同様、解説が丁寧で詳しいため大変おすすめです。
③ おすすめの人:中級者以上(1級~2級)。
心電図のみかた、考えかた 応用編
心電図のみかた、考えかた 応用編
オススメ度:★★★
心電図のみかた、考えかた 応用編
① 医師向けの本ですが、実践的な心電図判読の考え方が対話形式で解説されています。
→ 対話形式なのでスイスイ読んでいくことができます。
② もう一段上の知識を付けたい人に確実におすすめできます。
③ おすすめの人:中級者以上(1級~2級)。