ER心電図 Ⅰ:基本編の解説
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
※ ER心電図 基本編(初版第4刷2019年4月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。
問題185:高度房室ブロックの心電図所見
背景:50歳、男性。胸部圧迫感、激しいめまい。
リズム:やや不整。
心拍数:約 35/分。
軸:左軸偏位(Ⅰ誘導でQRS波の振幅の和が陽性、aVF誘導で陰性)。
移行帯:反時計方向回転。
P波:正常(高さ、幅)。洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。P波とQRS波は1:1対応していない。
QRS波:幅0.12秒程度(3 mm程度)、やや延長。5拍目のQRS波は幅が狭く、房室伝導が回復していると考えられる。
ST-T部分:Ⅲ、aVF誘導で陰性T波を認める。
これらの心電図所見より、「高度房室ブロック」と考えられる。
接合部調律時は「完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック」であり、二枝ブロックを認めている。
5拍目はPR間隔の延長を伴い、ここにおいては「三枝ブロック」である。
完全房室ブロックとは?
① P波とQRS波が完全に解離する。
② P波の周期はほぼ一定。
③ 心室補充調律の場合、QRS波は幅広く徐脈で周期が一定となる。
→「規則正しい徐脈」となる。
④ QRS波の周期はP波の周期より長い。
⑤ 補充調律がない場合、心停止となる。
⑥ 房室伝導が回復する時があれば「高度房室ブロック」となる。
房室解離とは?
① 伝導障害がないのに1拍以上、心房と心室が別の中枢に支配されている状態。
→ 心房と心室が「別々のリズム」で収縮する。
※ 本書の解説には「房室解離」と記載されているが、この定義では「本症例は房室解離とはならない(伝導障害=房室ブロックがあるため)」。
房室解離と完全房室ブロックの見分け方(ざっくり)
① P波の出現頻度 > QRS波の出現頻度。
→ 完全房室ブロック(+補充調律)。
② P波の出現頻度 < QRSの出現頻度。
→ 房室解離。
※ 本症例では、P波の出現頻度がQRS波よりも多く「完全房室ブロック+補充調律(接合部)」が疑われる。
使用している教材
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
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続・楽しく学んで好きになる! 心電図トレーニングクイズ2
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