ER心電図 Ⅰ:基本編の解説
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
※ ER心電図 基本編(初版第4刷2019年4月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。
問題191:右房拡大の心電図所見
背景:46歳、女性。胸痛、上腹部痛。
リズム:整。
心拍数:約 82/分。
軸:正軸(Ⅰ、aVF誘導ともにQRS波の振幅の和が陽性)。
移行帯:正常。
P波:洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。Ⅱ誘導で尖鋭化したP波を認める(高さ2.5mm程度:右房拡大)。
QRS波:幅0.10秒程度(2.5 mm程度)。
ST-T部分:Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、aVL、aVF、V5~V6誘導で平低T波を認める。
これらの心電図所見と病歴より、「右房拡大」と考えられる。
解説より、本症例は「左前下行枝の90%狭窄」の症例であった。
P波の基本
① P波とは「心房の興奮」を反映したもの。
② P波の「初め1/3は右房」、「後半1/3は左房」を表す。
③ 右房は心臓の最も右側にある。
④ 左房は心臓の最も後方にある。
→「洞調律」の場合、心房の興奮方向は「常に左下方向」となる。
→ 「洞調律」の場合、P波は「常にⅠ、Ⅱ、aVFで陽性」となる。
⑤ P波は「右房と左房の興奮が合成」されている。
⑥ 右房拡大(右房負荷)では「高さ」は大きくなるが幅は広がらない。
→ P波の高さ ≧0.25mV(Ⅱ誘導)=右房負荷。
⑦ 左房拡大(左房負荷)では「幅」が広がる。
→ P波の幅 ≧0.10秒(Ⅱ誘導)=左房負荷。
正常なT波の向き(基本)
①Ⅰ、Ⅱ、aVF、V4~V6誘導:陽性T波 → 正常。
② aVR誘導:陰性T波 → 正常。
③ 他:特になし。
※V1~V3誘導では「陰性T波でも正常」の場合がある。
※Ⅲ、aVL誘導の「単独の陰性T波」は異常としない。
※ 本症例は、解説より「V1誘導のT波が側壁誘導(Ⅰ・aVL・V5~V6)のT波より大きい(=T波バランスの異常)」ことと病歴・症状から虚血を疑っているが、この時点では非典型的な症例と思われる(問題192ではT波異常が顕在化している)。
使用している教材
判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
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