ER心電図 Ⅱ:応用編の解説
判読ER心電図: 実際の症例で鍛える Ⅱ 応用編
※ ER心電図 応用編(初版第1刷2011年6月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。
問題14:心室頻拍の心電図所見
背景:68歳、女性。突然の意識消失。
リズム:不整(期外収縮)。下段(心室頻拍時)は整。
心拍数:約 30/分(洞徐脈時)。
P波:正常(高さ、幅)。洞調律(Ⅰ、Ⅱ、aVF誘導で陽性P波)。下段(心室頻拍時)では明らかなP波は確認できない。
QRS波:幅0.10秒程度(2.5 mm程度、洞調律時)。期外収縮・心室頻拍時は幅0.16秒程度(4 mm程度)。3拍目の期外収縮のQRS波は、他の期外収縮と形状が異なる(多源性)。
ST-T部分:特記すべき所見なし。
これらの心電図所見より、「心室頻拍」と考えられる。
心室頻拍とは?
① 心室を発生源とする不整脈。
② 心室期外収縮が連続で起きたものともいえる。
③ 3拍以上にわたり心拍数が120/分以上となる状態。
④ しばしば増悪して心室細動に移行、心停止を引き起こす。
⑤ 脚ブロック型のQRS波でRR間隔が一定の頻拍。
⑥ P波はほとんどの場合確認できない。
⑦「洞捕捉、房室解離、P波脱落」などがある場合、心室頻拍と診断できる。
⑧ 原因は「異所性興奮の旋回、心筋細胞の自動能亢進」など。
※ 本症例では、「洞捕捉、房室解離、P波脱落」の所見を認めない。
幅広いQRS波の頻拍(wide QRS tachycarida)の主な鑑別
① 心室頻拍。
② 脚ブロックや変行伝導を伴う上室頻拍。
③ WPW症候群+心房細動。
※ 本症例では、②の可能性を否定できないが、QRS波の形状から①を疑っている(解説より)。
「心室頻拍」と「変行伝導を伴う上室頻拍」の基本的な鑑別
① 心筋梗塞・心筋症などの基礎疾患を有する = 心室頻拍の可能性が高い。
② QRS波の幅が0.16秒以上、左軸偏位、胸部誘導のQRS波の極性が同一 = 心室頻拍の可能性が高い。
③ 右脚ブロック型+V6誘導でQS型 or rS型 = 心室頻拍が示唆される。
④ V1誘導で二相性の右脚ブロック=上室頻拍が示唆される。
⑤ 左脚ブロック型+V1誘導のS波にノッチがある = 心室頻拍が示唆される。
⑥ 房室解離(融合収縮、心室捕捉)がある = 心室頻拍と診断できる。
※本症例の心電図はⅡ誘導単独であり、上記の鑑別をあてはめることができない。
※本症例では、「頻拍時と期外収縮のQRS波の形状が似ていること」から心室頻拍を疑っている。
使用している教材
判読ER心電図 2(応用編)―実際の症例で鍛える
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判読ER心電図: 実際の症例で鍛える Ⅱ 応用編
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判読ER心電図 1(基本編)―実際の症例で鍛える
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