【ER心電図 応用編を解く】問題54:心房細動、二枝ブロック。

問題解説

ER心電図 Ⅱ:応用編の解説


判読ER心電図: 実際の症例で鍛える Ⅱ 応用編

※ ER心電図 応用編(初版第1刷2011年6月)の問題を解いています。
※ 実際の心電図と解説については書籍で確認してください。

問題54:心房細動、二枝ブロックの心電図所見

背景:83歳、女性。呼吸困難。
リズム不整(絶対不整)。
心拍数:約 60/分。
極端な左軸偏位(Ⅰ誘導でQRS波の振幅の和が陽性、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導で陰性)。
移行帯反時計方向回転。
P波明らかな洞性P波は確認できない。
QRS波幅0.16秒程度(4 mm程度)、延長。V1誘導でrSR’型、Ⅰ・V6誘導で深いS波を認める(完全右脚ブロック)。aVL誘導で高いR波を認める(左室高電位)。
ST-T部分V1~V3誘導で脚ブロックに伴う二次性ST-T変化を認める。V4~V6誘導でST低下を認める。

これらの心電図所見より、「心房細動、二枝ブロック」と考えられる。
ほか、「左室肥大」と「側壁の虚血」が疑われる。

心房細動とは?

① 心房内に「無秩序な350~600/分の興奮」が起こる。
② 洞結節の興奮は抑制され、「洞性P波は消失」する。
③ 無秩序な心房興奮=基線の細かい不規則な揺れ=「f波」。
④ 心房興奮の一部が心室へ到達し、心室興奮を起こす。
 → RR間隔が不整で規則性がない
 →「絶対性不整脈」と呼ばれる。
※心拍数は房室伝導に依存する。
※完全房室ブロックを合併すると補充調律によりRR間隔が整となる。

心房細動の心電図の特徴

心房細動の病歴が長くなるとf波は徐々に減高する
② f波がはっきりしない場合は「洞停止」や「接合部調律」との鑑別を要する。
③ 心房細動に完全房室ブロックを合併すると「RR間隔が整」になりうる(著明な徐脈となる)。
④ 心房細動でも「心室期外収縮」はみられることがある。

心房細動の分類

① 7日以内に自然停止するもの=発作性心房細動
② 7日以上続き、薬剤や除細動で停止するもの=持続性心房細動
③ 停止しないもの=永続性心房細動

RR間隔が変動する正常なQRS幅の頻拍(Irregular narrow QRS tachycardia)の主な鑑別

心房細動
② 心房粗動(伝導比が変動する場合)。
③ 2度房室ブロックを伴う心房頻拍、多源性心房頻拍。

右脚ブロックとは?

① 右脚の伝導障害を反映した心電図変化。
→ 右脚自体は長く障害を受けやすい
一般集団の約2~3%の頻度であり、50人に1人程度に認められる。
③ 基本的には心疾患との関連はない「良性所見」である。
④ 完全右脚ブロックは「加齢」にともなって増加する。
⑤ 若年症例のなかに「心房中隔欠損症」が隠れている場合がある。

完全右脚ブロックとは?

① 主にV1誘導のrSR’型、Ⅰ・V6誘導のS波を認める。
② QRS波の幅が0.12秒を超える。
→ これらを認めた場合、「完全右脚ブロック」と判断する。

左脚前枝ブロックとは?

強い左軸偏位(QRS軸が-45°以上)がある場合に左脚前枝ブロックを疑う。
② Ⅰ、aVL誘導でqR型(正常の波形)。
Ⅱ、Ⅲ、aVF誘導でrS型が典型的
④ QRS幅が正常。
※ 特徴的な心電図変化を認めず、左軸偏位のみを示す場合に「左脚前肢ブロック」を疑う。
※ 鑑別:左室肥大、下壁梗塞、WPW症候群(C型)など。
S1S2S3パターン(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ誘導の全てで深いS波)と間違えないように注意。

二枝ブロックとは?

① 「完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック」または「完全右脚+左脚後枝ブロック」の状態を一般的に「二枝ブロック」とよぶ。
② 右脚および左脚前枝は線維が細く障害を受けやすい。
③ 一方で「左脚後枝」の途絶は稀である。
④ 2枝ブロックは発作性房室ブロック、完全房室ブロックへ発展する可能性が高く注意する必要がある。

※ 本症例では、完全右脚ブロック+左脚前枝ブロックを認める。

高電位差(左室高電位)とは?

① V5、V6誘導のR波の高さ>25mm。
② Ⅰ、aVL誘導のR波の高さ>12mm。
③ SV1+RV5>35mm。
 → いずれかをみたす場合、高電位差(左室高電位)とする。
※ Ⅰ、aVL、V5-V6のR波は左室収縮を反映し、反対側のV1から見るとS波として見える。
※ 高電位差だけでは正常な若年男性でもみられ病的意義は乏しい。

左室肥大の心電図

①「左室肥大」の心電図の特徴。
 → 高電位差QRS幅延長、ST-T変化、T波の変化
② 高電位差=左室肥大ではない。
 → 高電位差に加えて、ST-TやQRS、T波の変化に注目することが重要
左軸偏位、左房負荷、陰性U波なども伴うことがある。
④ 左室の圧負荷:高血圧、大動脈弁狭窄症など。
⑤ 左室の容量負荷:僧帽弁逆流、心室中隔欠損症など。
 → 心電図ではいずれも「左室肥大」と表現される。
⑥ 左室肥大に伴うST-T変化はⅠ、aVL、V5-V6誘導で確認する。
⑦ 左室肥大のST-T変化には明文化された基準はない。
 → 判断する基準は多少甘めでもよい。
⑧ 安静時のST低下は心筋虚血でないことが多い。

※本症例では、「aVL誘導の高いR波」と「ST-T変化」から「左室肥大」が疑われる。
 

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